富士登山競走五合目コースは馬返しから歩いても完走できる

制限時間4時間30分で、富士山の一合目から山頂まで走って登る富士登山競走。今回参加したのはその予選ともいえる、五合目コースだ。

山中湖から始発のバスで間に合う

前泊した山中湖畔のゲストハウス夢来人(むらびと)から、会場近くの富士山駅まではバスで23分。当日は金曜平日なので、最寄りの「富士山山中湖(ホテルマウント富士入口)」バス停から始発が7:36に出る。

宿を出るとき一緒だったアメリカ人の若者と、「登山競走がいかにクレイジーか」と雑談しつつバスを待つ。予定通りにバスが到着して、昨日夕方のような渋滞もなく、8時頃富士山駅に着いた。

スタートは8:30までなので余裕はある。ただし北麓公園会場に届ける荷物預けが8:15締め切りなので、駅から市役所まで駆け足で向かった。

その間1.6km、場所は昨日チェックしておいたので迷うことなくたどり着けた。万が一、間に合わなければ、1泊2日分の全荷物を背負って五合目まで走ることになってしまう。

預け荷物に何を入れるか

事前案内の資料に「20リットルの袋(緑色)五合目行き、午前6時45分まで」と書いてあったが、これは山頂コースの間違いなようだ。五合目行きの荷物は北麓公園行きと同じ8:15まで受け付けてもらえた。

標高2,250m、五合目の気温は770mのスタート地点よりマイナス13度といわれている。ゴールしたら体が冷えないよう、すぐシャトルバスで下山する予定だったので、上着と財布だけ五合目荷物に預けておいた。後から考えると、汗でびしょ濡れの衣類を替える着替えと、撮影用のスマホも入れておけばよかった。

五合目にはレース参加者専用の更衣室が用意されているので、早めに着替えてリフレッシュできる。また、ゴール後の登山口でトイレを借りたり補給食を買う可能性もあるので、五合目行きの預け荷物には小銭も入れておいた方がいい。

五合目タイムでブロック分けが決まる

市役所前のスタート地点には狭いながらもショップが出ていて、補給用のジェルなど購入できる。今回は2時間強の短時間レースだったので、特に補給食は持たなかった。

水は道中のエイドでもらえるので、完全に手ぶら。山頂コースなら上着や水・食料も少し持って行きたいが、五合目コースなら不要だろう。ハセツネのように「雨具持参」というルールもない。

今回割り当てられたゼッケン番号はEブロックで、整列が遅れたので最後尾からの出発になった。4年前に完走できた経験から、今回は「山頂コースの参加権を得られる2時間20分以内にゴールできれば十分」と甘く見ていた。

後から知ったのは、山頂コースのスタート位置ブロック分けは、五合目コースのタイム順に決まるという事実。

  • Aブロック…1時間50分切り
  • Bブロック…2時間10分以内
  • Cブロック…2時間20分(五合目コース制限時間)以内

ブロックごとの完走率をまとめたサイトによると、A91.6%、B63.9%、C15.7%。後ろに並ぶほど不利という傾向が読み取れる。登山道が渋滞する影響もありそうだが、五合目到達タイム順、実力通りの完走率とも考えられる。

たとえ五合目コースで2時間20分以内にゴールできたとしても、Cブロック判定なら山頂コースの完走率は統計上かなり低い。

登山競走は序盤が勝負

そうとは知らず、最後尾からのんびりスタートしてしまったが、さいわいほかのマラソン大会と比べて最初の渋滞は少なかった。「登山道に入ってから追い抜くのは厳しい」というのは覚えていたので、なるべく序盤のロード区間で順位をかせぐようにした。

後ろの方からどんどん追い抜きつつ市内のゆるい坂を上っていくが、前にいるはずのDブロックゼッケンがなかなか見えてこない。さすが登山競走、普通のマラソン大会より走行ペースがずっと速い。

レースの戦略を知っている人は、馬返しまでに少しでも前に出ようと必死なのだろう。ずっと登り坂なのに、最後尾のEブロックでもサブフォー並みのハイペースで飛ばさないと後れてしまう。序盤のプレッシャーはなかなか厳しい。

日焼け対策

市役所から登山口までのコースは実施要領に記載されていなかったが、4年前に参加した時と同じだったように思う。吉田市内も富士のすそ野なので、山頂に向かうまでずっと上り坂だ。スタート直後に日差しが出てきて暑くなったが、浅間神社の脇を通って県道701号に入ると木立の中を気持ちよく走れる。

標高が高いので気温は低いが、紫外線はその分強烈だ。序盤のロード区間で消耗を避けるために、帽子はかぶった方がいいだろう。手軽に着脱できる防寒アイテムとして、アームカバーも便利。一方、レッグカバーや着圧タイツは登山道での足上げに影響しそうなので、履かない方が楽に思われた。

五合目までは木陰の多いコースだが、それより上は日差しを遮るものがない。山頂コースに挑むなら、キャップやサンバイザーはもとより、首筋保護のシェードや日焼けカバーなどはフル装備した方がよさそうだ。

五合目コースはランニングシューズで十分

前回はアディゼロのトレランシューズ、今回もニューバランスのトレラン用MT620で参加してみた。前半の舗装区間は長いが、登山道に入るとぬかるみやがれきも多かった記憶があるので、多少重くても安全策を取った。

まわりの人の足元を観察してみると、9割がた普通のロード用シューズを履いている。ターサーやアディゼロ匠の軽量モデルを履いている人も多い。確かに登り一辺倒なら、つま先保護したトレランシューズは不要だろう。

ソールがすり減っていると、丸太や岩盤の上でグリップが効かず滑りそうだ。それさえ気を付ければ、少しでも足元を軽くして登坂の負荷を下げるのが登山競走の定石なのだろう。悪路走行の安定性とトレードオフだが、登りだけなら軽量化のメリットが勝る。

次回、山頂コースに挑むときは、自分も普通のシューズに替えようと思う。アシックスのターサークラスだとさすがに華奢すぎて不安だが、今履いているブルックスのラベナ8くらいソールの厚みとアッパー強度があれば十分だと思う。

登山競走の参加者は変人が多い

何か異様な足音がすると思ったら、一人だけ下駄を履いている人がいた。マラソン大会でサンダルやはだしの人はたまに見るが、さすがに木製の下駄は見たことがない。オフロードではグリップが効いていいのだろうか。ゴツゴツした岩場で下駄履きとは、とても走れるように思えない。

どうも登山競走の参加者には、普通のマラソン大会より奇人変人が多い。酸素が薄いからか、肩で息するどころか死にそうな呼吸音を発している人もいる。ときどきよくわからない奇声まで聞こえる。

トレランの練習で山籠もりを続けるうちに、どんどんおかしな習慣が身についてしまうのだろう。自分も人のことは言えないので、まわりに迷惑をかけないよう気をつけようと思った。

序盤のロード区間が一番きつい

神社を過ぎた先の一本道、林の中で景色はよいが、3年前に走った富士五湖ウルトラマラソンの悪夢がよみがえる。北麓公園に向かって、この長い上り坂を延々と走らされた記憶がある。

傾斜は多少変化するが、ずっと上りであることに変わりはない。自転車に乗っていれば気にならない斜度だが、走っていると少しの坂でも心拍数がじわじわ上がる。

中の茶屋から登山道に入っても、まだしばらくは舗装路が続く。ところどころ路面がひび割れているので、気を付けないと足を引っかける。なぜかそこから馬返しまで、100メートルおきくらいに女子高生が2人ずつ並んで応援してくれる。

場所的に不自然だが、レース序盤で幻覚を見るにはまだ早すぎる。参加者の顔色をチェックして、救護を呼ぶボランティアスタッフかもしれない。高山病や転倒・落石の危険を考えてか、オレンジ色のベストを来て並走してくれる救護スタッフの数は多かった。

馬返しまでは歩く人が出ない

馬返しに向けて徐々に傾斜がきつくなるが、ここまではまだ誰も歩く人はいない。普通のトレランレースだったらこのくらいの斜度から歩きはじめる人も増えそうだが、登山競走の参加者はもう少し粘るようだ。

途中で階段が出てくるあたりから、歩きはじめる人が現れる。それでも平坦な道になるとみな走り始めるところがストイックだ。馬返し以降は道が狭くて追い抜きも厳しく、前の人との間隔が伸びたら走って追いつく、というような走り方になる。

木陰で涼しいのに、運度量が多すぎて衣類は汗でびっしょりになる。サンバイザーも水分が飽和して、つばの先から雨のように汗がしたたり落ちる。ハンカチを握ると汗を絞れるくらい、おそろしいほど発汗した。短いレースだが途中のエイドで水分補給は必須だ。

五合目コース後半は楽しいハイキング

馬返しまでは集団の走行ペースが速くてつらかったが、後半はほぼ歩きなので心拍数も下がってずっと楽になった。馬返しのチェックポイントでタイムが1時間5分くらいだったので、あとは歩いてもゴールできるかと油断した。

坂もきついのに、どうして走って追い抜く人がいるのだろうと不思議な気もしたが、後から考えると山頂コースのブロック分けのためだった。10分タイムを縮めれば上位のブロックに配属され、その分ポジション取りが楽になる。

自分も馬返しから全力で走り続けていれば、上位のブロックを狙えたかもしれない。五合目コースの後半は「手ぶらで楽しいハイキング」なんて考えながら、まったり歩いてしまった。

携帯トイレも持参した方がよい

補給所では水とアクエリアス、レモンや梅干をもらえる。ただし五合目のゴールまで仮設トイレは見当たらなかった。実施要領に「立ち小便等は失格」と明記されているので、途中で催してはいけないという緊張感がある。携帯トイレを持参した方が、まだ安心かもしれない。

ゴール近くで一瞬舗装路になるので走ろうと思ったが、体がいうことを聞かずまったく力が入らない。五合目とはいえ、吉田口の標高は2,300m。空気が薄く、疲労も重なってもうろうとしてくる。ここからさらに上を目指す山頂コースは、過酷な戦いになることだろう。

曲がり角で唐突に出現したゴールをくぐると、手元のタイムは2時間10分くらい。Bブロックに入れるか、ぎりぎりのラインだった。

4年前より20分も遅くなった

4年前の記録証を読み返してみると、五合目ゴールタイムは1:50:04だった。あと4秒でAブロックに入れた好成績。当時の実力なら、そのまま山頂コースまで完走できたかもしれない(その後3年間のエントリー権利は逃してしまった)。

ほかのトライアスロンやトレランレースはダラダラのんびり走ってもクリアできるが、富士登山競走の制限時間は本当に厳しい。持久走というより、駅伝に近いスプリントの競技に思われる。

山頂コースのブロック分けがBかCか気になるところだが、ひとまず大きなトラブルもなく五合目コースを完走できたのはよかった。

ゴール地点からバスまでかなり歩く

預け荷物にスマホを入れるのを忘れてしまったため、五合目から見下ろした絶景は撮影できなかった。ゴール地点から下山シャトルバスの乗り口まで、疲れた足で2kmくらい歩くことになる。7月下旬の吉田口は、レース以外の観光客・登山客でごった返していた。

ひっきりなしに出入りするバスが危険なので、レース参加者はトンネルを抜けた先の駐車場から乗車するルールのようだ。雲上閣に用意されていた参加者用のスペースを覗いたが、単に更衣室と水の補給を受けられるだけだった。トイレは有料で100円かかる。

北麓公園で焼きそば・うどんを堪能

帰りのバスで隣に座った人と話す機会があった。聞けばUTMFの完走者ということで、さすが登山競走はレベルが高い。わざわざ関西の方からいらっしゃったようだが、知名度の高い富士山レースとあって全国から参加者が集まっているようだ。

北麓公園で預け荷物のバックパックを受け取り、事前に配布されていた600円分のクーポン券を使って、富士宮やきそば(500円)と吉田うどん(300円)をいただいだ。昨晩、紅富士の湯でいただいたうどんの汁は黒かったが、吉田うどんのスープは、ほうとうのように味噌味だった。

公園の駐車場から富士山駅行きの無料バスが出ているので、便乗させてもらった。五合目コースなら短時間で終わって、夕方には東京に帰れる手軽さがうれしい。

翌日から台風上陸の予報だったので、レース当日が晴天にめぐまれたのは運がよかった。正確なタイムと記録証は後日郵送なので、それを受け取ってからまた山頂コースに向けた作戦を考えたい。