東京都内で手軽にトレラン・MTBを楽しめる、八王子の滝山城跡

多摩川河川敷のサイクリングロードを上流に向かって走っていると、八高線の高架をくぐったあたりから左手(右岸)にうっそうとした森が見えてくる。標高的にはたいしたことなく、山というより丘という程度の起伏だが、実はこの中に戦国の要衝、滝山城という遺跡がある。

滝山城は地元の人くらいしか散歩に来ないローカルな史跡。高尾山の近くにある八王子城の方がまだ栄えている。地味ながら、山城の特徴的な構造はよく保存されている。城好きなら曲輪や虎口の痕跡を見て盛り上がれるはずだ。

ここは都内から手軽にアクセスできる自然公園としても、おすすめの穴場。奥多摩まで本格的な登山に行かなくても、マムシが出てくるようなワイルドライフを満喫できる。昭和記念公園あたりで物足りなくなってきたら、開拓してみるのもいい。

国道16号線から自転車でアプローチ

滝山城へのアクセスはかなり不便といえる。公共交通機関なら八高線の小宮駅が最寄りとなるが、そこから歩いて2kmは離れている。さらに人工の要害、国道16号線(東京環状)が東側の尾根を分断しており、ひっきりなしにトラックが通る4車線を横断するのは命がけだ。

以前、滝山街道のバス停の方に車をとめてアプローチしたが、特に公共の駐車場は用意されていなかった。マイカーなら道の駅「八王子滝山」に駐車して、少し遠いがそこから歩くのがスムーズだ。帰りはレストランで八王子ラーメンを楽しめる。

今回は自転車でやってきて、16号線の坂の上にある入口から向かってみた。この付近は車で通過するしか用のない殺伐としたエリアだ。ゴミ処理場や車検場以外に、住宅やコンビニもない。

路上に自転車をとめておくのも物騒に思われたので、砂利道を少し上った階段の前に駐輪しておいた。ほかにも先客がいたので、16号線沿いにバイクや自転車で来たら、ここにとめておくとよさそうだ。

予想外にワイルドな大自然

太い道をそのまま直進する方がメインルートに思われるが、立入禁止の先はリハビリ病院の私有地で、行き止まりになっている。階段を登った方が正解で、古峰ヶ原園地と呼ばれる林を抜けて城跡までアプローチできる。

都内の公園としてはなかなかワイルドな趣のプチ大自然を楽しめる。東京の西側、多摩丘陵から八王子にかけては、ところどころこうした里山のような風景が残っている。

雑木林を抜けたと思えば、次は杉の林になり、さらにススキの原っぱも出てきて変化に富んでいる。土日でも通り過ぎるのは、犬の散歩をしている人やハイカーが数名程度。紅葉はたいして楽しめないが、高尾山よりずっと人も少なく静かな山歩きを楽しめる。

古峰ヶ原園地から滝山城までは踏み跡もしっかりしており、雨でぬかるんでいなければ普通のスニーカーで十分歩ける。起伏もたいしてないので、近くに住んでいたら散歩にぴったりなのがうらやましい。

トレラン・MTBの練習もOK

たまにランナーの人ともすれ違うので、トレーニングにもよさそうに思われる。地面は落ち葉でふかふかしており足に負担が少なく、環状線から離れれば排気ガスも臭わない。トレランの人には起伏が少なく物足りなく思われそうだが、登山客がいないので迷惑をかけずに思う存分走れる。

中の丸まで進むときれいな公共トイレもある。終点の本丸で折り返せば、往復5kmくらいのコースだろう。目的に応じて何度か往復するのもありだと思う。

ほかに人が少ないということで、MTBで乗り込んで来る人も見かけた。あまり流行ると禁止されそうだが、自転車でも来られる手軽なオフロードといえる。

城跡に近づくと砂利道に変わるが、写真だけ見るとまわりの風景は山奥の尾根道にしか見えない。

実際はすぐそばを車が通っていて、近隣の野球場から声も聞こえてくる。たいした装備も必要なく、気分的には本格的な山登りの雰囲気を味わえる、おいしいスポットだ。

充実すぎる山城解説の案内板

城跡に入ると、要所要所にイラスト付きの解説が設置されている。16世紀につくられた戦略的な山城なので、石垣や天守閣のたぐいは残っていない。しかし、土塁や堀、虎口といった、城郭検定のテキストに出てくるような、山城の見どころは網羅されている。

案内板を見ながら、「ここで馬出から援軍が出てきて挟み撃ちにされたらひとたまりもないな」とか、想像を膨らませると楽しい。低山とはいえ迷路のように起伏が複雑なので、何も知らずに攻めてきたら、罠にはまって全滅させられてしまうだろう。

解説がないと素通りしてしまいそうだが、よく見ると確かに人工的に尾根筋を断ち切った堀切や、曲輪の中に設けられた土橋がわかる。400年も放置されたら元の自然に帰りそうだが、今は人の手が入って定期的に草刈りされているようだ。おかげで堀の地形がわかりやすくなっている。

山頂から展望も楽しめる

観光客に一番人気のスポットは、中の丸の展望台だろう。トイレが併設された大きな広場になっており、ベンチやテーブルもあるのでお弁当を広げるのにちょうどよい。建物の裏手に回り込めば、北向きに多摩川を見下ろす絶景を拝める。

本丸に通じる木製の引き橋が再現されており、唯一の構造物といえる。この下をくぐって坂を下りると、多摩川の河岸に抜けられる。

本丸の跡には霞神社という社が立っており、その奥にも展望スポットがある。

中の丸の展望台が混んでいたら、もう少し歩いて本丸の方で一服するのもおすすめだ。神社の裏のわかりにくい位置にあるので、ここを訪れる観光客も少ない。

うっかり藪道に入ると迷う

案内の看板によると、その先にもいくつか曲輪の跡があるはずだ。神社の裏手を抜けて、それらしき方角に向かってみたが、だんだん道が険しく勾配も急になっていく。一応、踏み跡は残っているが、正規の登山道でなく作業用林道という感じ。しかも執拗に曲がりくねっていて、自分がどの方角に向かっているのかわからなくなる。

まさか八王子の裏山で遭難なんて恥はさらしたくない。うっかりマムシでも踏まないように、だんだん深くなる藪をかきわけ汗をかきつつ進んだら、見覚えのある広場に戻ることができた。

どうやら神社の奥の藪道は、ぐるっと回って引き橋のたもとに戻って来るらしい。北西の曲輪まですべて見られなかったが、おそらく別のルートがあるのだろう。どう考えても、あのまま藪を突っ切っていくようには思えない。これまで何度か訪れた滝山城だが、地形が複雑すぎていまだに未踏のエリアがある。

かたらいの路は全長9.5km

案内板を見ると「かたらいの路」という公式ルートがあることを知った。JRの小宮駅から東秋留駅まで、滝山の丘陵と秋川を越えて合計9.5km。自然豊かで変化に富んだハイキングを楽しめそうだ。

今回は園地から城跡まで往復したショートコースだったが、次回はぜひフルコースで挑戦してみたい。