ミニベロ・小径車でトライアスロンのレースに出場できるのか?

ダホンの小径車を購入して乗り回しているうちに、ふと「これでトライアスロンに出られないか」と思いついた。

Dahon K3

Dahon K3

折りたたんで会場まで輪行できるため、離島レースのネックであるバイク輸送の費用を省ける。たとえ航空・フェリーでバイク分の追加料金が必要になったとしても、サイクリングヤマト便などで送るより安上がりだろう。

発送用にバイクを分解・梱包する手間と、自力で持ち運ぶ苦労を比べると、送ってしまった方が楽な気もする。しかし輪行すればレース前後に付近を観光したり、空港・港から宿や会場まで自走したりできて、行動の自由度が高まる。

TT仕様の本格的なロードバイクと比べれば、ミニベロはレースで不利になるはすだ。スピードやタイム面だけでなく、その後のランパートに向けて体への疲労蓄積も懸念される。

しかし順位を度外視して制限時間内の完走を目指すなら、小径車で走り抜くのも無理ではないと思う(ショート~ミドルの距離なら)。多少の坂はあっても、国内レースならギア3速のダホンK3で十分対応できるだろう。

果たしてトライアスロンのレースはミニベロ・小径車でも出走可能なのか、公開されている競技規則を調べてみた。

バイクはロードレーサーが基本

ロードレースほど厳格でないとはいえ、トライアスロンでも車体の構造に関してルールが設けられている。一般人が参加するエイジ部門より、日本選手権やエリート部門の方が当然ルールも厳しい。

調べたところ、たいていのレースではJTU(日本トライアスロン連合)の競技規則を基準としたうえで大会独自のローカルルールを設定しているようだ。距離の長い本格的なレースほど、規則が厳しくなる傾向がある。

今まで出場したロングディスタンスのレースで、配布資料に書かれていた規則は以下のとおり。宮古島と五島は公式ウェブサイトにPDF資料が公開されている。バイク仕様に関する部分を抜粋すると以下のとおり。

宮古島の場合は「電動でなく自力で進めるバイクであればOK」ということだろうか。「押す」のもありなので、バイクにまたがらずにハンドルを押して走ったり、ペダルなしのストライダーでも出場できるのだろう。

ミニベロ禁止/OKの大会

大会によってはミニベロ・小径車を明確に禁止しているところもある。MTBやクロスバイクに対する解釈はまちまちだ。

逆にミニベロの出場をおおやけに認めているレースが、関東圏で2つ見つかった。

九十九里のQ&Aはあいまいだが、ダホンの小径車で出走・完走されているブログ記事を拝見した。距離によって制限がなければ、ミドル部門もミニベロで走れるはずだ。

アイアンマンほどではないが、九十九里は参加費が相場より高いのがネック。都内JRの車両広告で動画を見かけたりするので、宣伝費が上乗せされているのだろう。

JTUとUCIルールの微妙な差異

佐渡や五島の大会が準拠している、JTUの規則を詳しく調べてみる。

実はJTUはUCIルールに準拠しており、「トライアスロンだからバイク形状はまったく自由」というわけではない。重量規定は適用されないが、サドル位置についてはUCIよりむしろ厳しかったりする。

第90条(バイクの基本構造)で「ロードレーサーを基本とする」と書かれてはいるが、MTBやミニベロ車種がどこまで許容されるのかは明記されていない(リカンベントとアシスト機能付きのバイクは後の条項で禁止されている)。

90条の第2項で、「ドラフティング禁止レース」においてはUCIタイムトライアル競技規則を適用とある。これはUCI規則(JCF版)パート2第4章「個人タイムトライアル」の部分を指すのだろうか。ここにはバイク形状や寸法の規定がない。

一方で「UCI技術規定の明確化ガイド」には車体に関する細かい寸法規定が掲載されており、JTUルールの内容はこれを援用しているようだ。「ドラフティング禁止レース」及び「エイジグループのドラフティング許可レース」に対して適用される基準は以下のとおり(カッコ内はUCIの対応個所)。

  • 全長185cm、幅50cm以内(UCI 1.3.012)
  • BB中心は地面から24~30cmの範囲(UCI 1.3.015)
  • BB中心と前輪軸の水平距離は54~65cmの範囲内(UCI 1.3.016)
  • BB中心とサドル先端の水平距離は後ろ15cm、前5cm以内(UCI 1.3.013)
JTUルールブックにおけるバイクの寸法規定

JTUルールブックより

エリートの「ドラフティング許可レース」では、上記に加えてフレーム形状やサドル位置に関する細かい規定が追加される。しかしどちらの場合もUCIルールで有名な「車体重量6.8kg以上」は含まれていない。フレームのチューブ形状や角材の接続角度についてもUCIほどは厳しくないようだ。

サドルはどこまで前に出せるのか

JTU規則では、BB~サドル先端間の距離がUCI規則から微妙にアレンジされている。

UCI明確化ガイドでは、トラック短距離に限り5cmのクリアランスを越えてBB中心までサドル先端を出してよいとある。これはエアロポジションを実現するため、どこまでサドルを前に出してよいかといルールだろう。

JTUではUCIにない「サドルを後ろに下げられるのはBB中心から15cmまで」というルールが追加されている。これは上体を起こしたリラックスポジションだと、トライアスロンにふさわしくないという意図だろうか。

手持ちのロードバイクはショートリーチのDHバーのため、特に前乗りを意識したセッティングにはしていない。しかしセラSMPのサドルはフロントノーズが長いのか、「BB中心から5cm」の範囲をオーバーしてしまっていた。実際測ると、この条件に抵触している車体は多そうだ。

サドル先端とBB間の距離

JTU準拠の佐渡や五島で、バイク預託の際にサドルの前後位置まで厳しくチェックされることはなかった。せいぜい「ブレーキがちゃんと効くか」「ヘルメットのあご紐がゆるんでないか」を見られるくらいだ。

気になるホイール直径の規定

小径車の判断基準としては、ホイールのサイズがまず問題になるはずだ。JTU規則では、エリートのドラフティング許可大会のみUCI(ARTICLE 1.3.018)と同じ「タイヤを含めて直径55~70cm」と規定されている。ほかにも「20本以上のスポーク」「リムは金属製」など制約が多い。

それ以外の部門では、ホイールの素材や寸法に関する条件は記載されていない。一般選手のエイジグループなら、ホイールはカーボン製でもバトンでもディスクでもOKということだ。

JTUのホイールに関する規則からは、特に20インチ以下の小径車を排除する文面は見当たらなかった。

フラットバーは禁止

ロードレースではブルホーンハンドルやDHバーの使用を禁止しているところが多い。平地走行で空気抵抗を減らすならブルホーンが有利だが、他のレースにも出るため敢えてドロップハンドルにしているトライアスリートもいるだろう。

JTUルールは第94条で「ドロップハンドルが基本」とされており、それを途中で切断したり逆向きに取り付けることは禁止されている。DHバーをアタッチしていれば下ハンを握ることはないから、切ってしまった方が空力的に有利そうだがダメなようだ。

ドラフティング禁止レースでは「前輪の先端部を越えない」ハンドルバーとクリップオンバーが許可される。2本のバーの先端をつなぐ必要もない。ブルホーン型、エアロバー、DHバーの類も許可されているが、実はフラットバーハンドルだけ使用禁止とされている(マウンテンバイクトライアスロンと初心者向けの大会については大会規定による)。

佐渡や五島が「初心者向け」とは思えないので、JTU準拠の両大会にフラットバーで出場するのはNGだ。フラットバーにバーエンドバーを付けた状態でもおそらく厳しいだろう。

フラットバーハンドル

折りたたみ式の小径車はたいていフラットバーハンドルなので、この点は注意しないといけない。さらにダホンK3のハンドルは長さが54cmもあるので、そもそも「車体幅50cm以内」のルールに違反してしまっている。

非伝統的バイクの承認例

JTUのニュースリリース(2018年11月30日)でバイクの形状に関する規定が追加されていた。ディスクブレーキが許可されたほか、ITU(国際トライアスロン連合)に承認された「非伝統的又は一般的ではないバイク」の一例が興味深い。

Cervelo以外は見慣れないメーカーで、シートチューブやダウンチューブが省略された大胆なフレーム形状になっている。掲載車種以外にも似たようなバイクは存在するが、あくまで一例なので問題ないのだろう。ここまで機材に投資する人はハイレベルなレース指向だと思うので、実戦で使えなかったら売れないはずだ。

BB~前輪軸の間隔がアウト

バイクの規定に関して最も詳しいJTUのルールブックを読み解いてみたが、フレーム構造や車体寸法からは小径車・ミニベロ・折りたたみ機構を禁止する条項が見つからなかった。

ためしにダホンK3の各寸法を測ってみたら、BB中心~前輪軸の間隔が52cmしかなく規定の54~65cmに達していなかった。ホイールベースの短い小径車はここの寸法が厳しい。

BBから前輪軸までの距離

もしミニベロでも寸法が適合しているとなれば、あと気になるのは「ロードレーサーが基本」という大前提だ。こればかりは大会を運営する事務局や審判の判断によるのだろう。そもそもJTU規則を援用しない大会もあるので、すべてはローカルルール次第といえそうだ。

そもそもレースでミニベロを見ない

実際のところ、ミドル~ロングの本格的なレースで普通のロードやTTバイク以外の車種を見たことがない。ショートやスプリントの距離であれば、MTBやクロスバイクが走っていた記憶はある。

トライアスロンレース会場のバイクラック

「離島まで輪行するのに小径車が便利」というのは誰でも思いつきそうなアイデアだ。チューンナップされたスピード系のミニベロなら、ロードと並んで180km走るのも不可能ではない。それでも「今まで見たことがない」ということは、やはりたいていのレースで小径車は禁止されているのだろう。