膝の半月板・靭帯の勉強に役立った本と論文、動画や模型の紹介

数年間、持病の治療に取り組んできて、膝の構造について何となくわかるようになってきた。最初は半月板や各種靭帯の存在すら定かでなかったが、模型を眺めたり本を読んだりしているうちに痛みの原因や治療法まで把握できた。

膝を患うようになった一般の人向けに、学習の参考になった資料を紹介しようと思う。最初はネット上で医師の書いている記事を読めば、基礎的な知識は身につく。病気について体系的に理解しようと思ったら、コンパクトにまとまっている市販書籍を一冊読んでみるのがおすすめだ。

その後は興味に応じて専門書や動画で手術の方法を調べたり、公開されている論文を読んでエビデンスをたどっていけば理解が深まると思う。入院中の暇つぶしにもぴったりだ。医師にとっては面倒な患者かもしれないが、馬が合えばいろいろ難しいことも教えてもらえる。

靭帯再建や半月板の治療方法は定式化されているので、どの資料を読んでも主張に食い違いは見られなかった。医師に提案された治療法を検討するため、さまざまな学説に当たってみる必要はないだろう。最低限、膝について網羅された入門書を一冊手元に置いておけば、それで十分といえる。

膝関連の一般書籍

最初にあたったのは、公立図書館に置いてある膝や下肢関節の本。変形性膝関節症をはじめとして、一般向けの健康法や解剖学の本はだいたい目を通してみた。健康関連の本は需要があるのか、図書館で豊富に手に入る。10年くらい古くても内容は大差ないので、わざわざ書店で買う必要はない。

何冊か読んだ中で一番おすすめの本を挙げるとしたら、法研のEBMシリーズだ。発症のメカニズムから診断法、治療法、リハビリと予防までバランスよく網羅されている。

変形性膝関節症―正しい治療がわかる本 (EBMシリーズ)

変形性膝関節症―正しい治療がわかる本 (EBMシリーズ)

黒田 栄史
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一般向けの本で、軟骨内のプロテオグリカンの働きにまで触れているのは、この本だけだった。「科学的根拠に基づく」というコンセプトのとおり、章末に海外の参考文献までリストアップされている(内容はリハビリ関連が中心)。

変形性膝関節症についてとりあえず1冊押さえておくとしたら、上記の黒田先生の本がベストだと思う。その後リハビリ段階に入ったら、ウォーキングやストレッチ、筋トレ・体操の本を読むとモチベーションが上がる。

手術の解説書

具体的な手術の方法を調べるには、医師向けのマニュアル本が参考になる。膝関連の手術について解説が充実していたのは、メジカルビュー社のOS NEXUSシリーズ。発売年も新しく、膝に関するNo.5、9、15の3冊に目を通せば、たいていの術式は見つかる。

特に半月板の縫合については、垂直・水平・バケツ型と断裂パターンに分けて詳しく解説されている。オプションとしてFibrin Clotの作り方まで載っており、手術前の予習に役立った。

スポーツ復帰のための手術 膝 (OS NEXUS(電子版付き) 5)

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患者としては、別にここまで知らなくてもまったく問題はない。ただ、膝の関節鏡手術はモニターで実況中継してもらえるので、予備知識があると理解がはかどる。自分も最初はぼーっと眺めているだけだったが、3回目の手術を受けるにあたって、ようやく勉強する意欲が湧いてきた。

上記は医療用の専門書なので、さすがに値段が高くて一冊1万円以上する。幸いOS NUXUSシリーズは丸善の大型書店に並んでいた。自分に当てはまる部分を立ち読みするだけで構わないと思う。

手術の動画(閲覧注意)

実際の手術方法や使われる医療器具について、さらに詳しく知るならYoutubeに動画が出ている。自分が2回目に半月板の水平断裂をInside-Outで縫ってもらった方法は、おそらくこれに近い。

医師向けの解説動画で、関節鏡内の映像は本番で見るとのそっくり。使われている膝は本物なのか、トレーニング用の模型なのかわからない。おそろしくリアルなので、外から見た視点はショッキングだ。この手の海外動画には、一般向けにちょっと閲覧注意な場面も出てくる。

さすがに手術本番では目隠しされて、患部の様子までは見せてもらえない(見る度胸もない)。モニターに映される膝内部の映像はきれいだが、カーテンで仕切られた下の方で「こんなことが行われている」と想像する助けにはなる。

海外の解説論文

興味があれば、膝に関する海外の論文を読んでみるとさらに理解が深まる。ウェブで公開されているテキストの中で、”Meniscal Repair: Reconsidering Indications, Techniques, and Biologic Augmentation”という論文が役に立った。リンク先のページからPDFをダウンロードできる。

出典はJBJSというジャーナルで、整形外科の分野ではそこそこインパクトファクターが大きいらしい。2017年の掲載で、半月板の仕組みや最新の治療法について網羅されている。

Fig.3では半月板の断面をイラスト化して、コラーゲン繊維の層構造にまで言及されている。半月板とは椎間板の繊維輪のように、繊維方向の向きを変えて積層した木質建材、集成板のようなものだとわかった。

半月板の断面図

進化の過程で、最低限の材料で強度を増すように改良されてきたのだろう。膝の靭帯の仕組みもよくできているので、何か工学的に応用できないかと思う。トレッキングポールのショックアブソーバーに十字靭帯のような機構も付けたら、ひねりにも強くなるのではなかろうか。

論文の最後の方では、術後の回復を促すBiological(生物学的)な治療法も紹介されている。Platelet-Rich Plasma InjectionやStem Cell-Based Therapyは、まだ日本国内ではマイナー(保険適用外)なサービスらしい。いずれ有効性が実証されれば普及していくのだろう。

一家に一台、膝模型

膝の解剖学的な構造について知るには、模型を見るのが手っ取り早い。最初は本を読みながらポンチ絵を描いて理解しようとしたが、腱や靭帯が入り組んでいて立体構造がよくわからない。関節が伸びたり縮んだりするときの挙動も不明瞭だ。

病院で医師が説明に使う膝の模型を見て、自分も欲しいと思った。調べるとネットの通販で3,000円くらいから手に入る。医療用の本格的な模型は数万もするが、膝だけ取り出した実寸大の簡易模型はリーズナブルだ。

購入してみると、靭帯が骨にネジで留めてあったりして簡素なつくりだった。関節部分で動かすこともできるが、大腿四頭筋と膝蓋腱がこわばってスムーズに動かない。筋肉が固まって可動域が狭まってしまった、不健康な膝の例といえる。

しかし肝心の半月板や前十字靭帯は精巧にできていて、骨の間の内部組織がよくわかった。模型をひねると、側副靭帯と十字靭帯が組み合わさって踏ん張る様子も観察できる。

膝の人体模型

半月板は実際には内側と外側のリングがつながった、プレッツェルのような形だ。脛骨の上部に固定されていて、膝を曲げても膝蓋骨のように上下に動いたりはしない。

膝の人体模型

前後の十字靭帯は、まるでDNAの二重らせんのようにクロスしている。模型を見る限り、回旋運動を抑えるのは外側の靭帯が主で、内部の靭帯2本は補助的な役割に見える。細くて短いので、ちょっとでも無理な力を加えると簡単に切れてしまいそうだ。

膝の人体模型

膝模型に腸脛靭帯やシンスプリントまでは表現されていない。しかし、2次元ではわかりにくい膝の内部を把握できるので、ランナーならひとつ持っておいても損はないと思う。大きさも高さ30cmほどなので、ちょっとしたオブジェとして家に飾っておくのもいい。